僧帽弁閉鎖不全症(心臓弁膜症)
<僧帽弁閉鎖不全症とは>
犬で最も多くみられる心疾患で、中高齢の小型犬で多く発生します。チワワ、シーズー、マルチーズ、ポメラニアン、プードル、シュナウザー、キャバリアキングチャールズスパニエルなどでよくみられます。
僧帽弁は、左心房と左心室の間にあり、左心室の血液を大動脈(全身)に送り出すときに、左心房への逆流を防ぐはたらきがあります。僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁がうまく閉まらず、全身に送り出されるべき血液の一部が左心室から左心房へ逆流してしまう病気です。
主な原因として、加齢により僧帽弁に変性(粘液腫様変性)が起こり、僧帽弁が正常に閉鎖できなくなることで発生します。
<症状>
初期には無症状ですが、進行して心臓、肺に負担がかかってくると、疲れやすい、咳がでる、倒れる(失神)、呼吸が速い・苦しそう、チアノーゼ(舌が紫色)などの症状が認められます。病気の進行に伴い、心臓は大きくなっていき、さらに進行し、うっ血性心不全を発症すると、肺の中に水が貯まり(肺水腫)、重度の呼吸困難を呈し、命に関わる状態となります。逆流部位(三尖弁閉鎖不全の併発など)や合併症(肺高血圧症、不整脈など)の有無で、症状が変わってきます。
<治療>
すべての僧帽弁閉鎖不全症で治療が必要なわけではありません。
各種検査により丁寧に病態評価を行い、そのワンちゃんの病態に合わせたお薬・食事を処方いたします。
慢性腎臓病
<慢性腎臓病とは>
慢性腎臓病とは、腎臓が様々な原因によりダメージを受けて徐々に線維化することで、長い時間をかけて少しずつ腎機能が低下し、最終的に機能しなくなる状態です。一生のうちに、犬は10頭に1頭、猫は3頭に1頭が腎臓病になるといわれています。
腎臓は尿をつくり、体内の水分量を調整しています。腎臓の機能が低下すると、老廃物を尿に排出できなくなり、毒素が体にたまり、食欲の低下、嘔吐などが生じます。また、必要な水分を保持できなくなり、脱水が起こります。最終的に尿毒症といった状態で亡くなります。
進行速度は、原因となる腎臓病の違い(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎、下部尿路疾患、急性腎不全など)、合併症(高血圧、タンパク尿、高リン血症など)の有無により大きく変わってきます。
ワンちゃん、ネコちゃんの慢性腎臓病は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)により、進行段階をもとにステージ1からステージ4までにステージ分類されています。
<症状>
最初に現れる症状として、水をたくさん飲み、薄いおしっこをたくさんすることが多く、この時点で腎臓の機能は正常の1/3程度まで低下しているといわれています。やがて、食べない、吐く、やせてくるといった症状が出てきます。失明(高血圧性網膜症)、貧血、けいれん発作(尿毒症)などがみられる場合もあります。
<検査>
血液検査、尿検査、画像検査、血圧測定、眼科検査などを行います。
慢性腎臓病では、腎臓が小さくなり(萎縮)、表面が凹凸になり(変形)、腎臓内の血流量は減少します。
<治療>
一度ダメージを受け壊れた腎臓組織は再生できないため、残された正常な腎臓組織への負担をできるだけ減らし、病気の進行を遅らせることが治療の目的となります。慢性腎臓病は、早期発見、早期治療が重要で、定期的に検診を受けて病気の進行具合を把握し、病態、症状に合わせて、食事療法、各種内服薬、点滴などにより治療を行います。